ちゃれんじ成年後見


重い腰

 平成15年4月、佑哉の入所している施設が、国の政策から支援費制度に移行し、利用契約を締結するようになってから2年。まだ、15年時点では契約に関し、親が代理契約を締結することはできた。(今でもなんら保護者に変わりはないが)
 しかし、成年後見制度利用の流れは徐々に押しよせ、施設でも平成18年の更新契約には、成年後見人が必要だと施設から文書が届いてしまった。(成年後見人の有無で契約の可否はできない・・・北海道庁)

 とにかく、成年後見制度ってなんなんだ。解らなければ勉強するしかない。法的にも胸を張って親として、父親として保護者を宣言できるように、そして佑哉の為、そして入所者の為、がんばろ〜と。

後見パンフ

 成年後見制度でとても参考になったページがあります。
検事さんみたいな顔をした弁護士 西村武彦さんの成年後見通信
興味のある方は、直接読んでみることをお奨めします。
西村先生は、障がい者のこと懸命に勉強してくれて、
障がい者の側に立った弁護士さんとも言えます。

晴れた空

 佑哉の場合、親として本当に成年後見制度を利用すべきか考えてみた。成年後見制度には
   1 補助  判断能力が不十分な方
   2 保佐  判断能力が著しく不十分な方
   3 後見  判断能力が欠けているのが通常の状態の方
 とあり、佑哉はって言うと3の部類かな。法律の文書とか成年後見の資料を見ていると、「IQが」とかIQで判断するみたいな記述が目に着く。佑哉の場合IQはって言うとその実わからない。病院での見立ては「測定不能」、どうしてもIQ表示してほしいとお願いしたら、しぶしぶじゃあIQ17ね。なんていう始末。
 被後見人に認定されると選挙権、被選挙権の剥奪という規定もあるが、白票しか投じることの出来ない。(票を当てにしている人はごめんなさい)書くことはもちろん(ボールペンの消費は1日1本以上で好きなこと書いてる)投票所の職員に伝えることもできない。まあ、選挙権が無くてもいいかな。ぐらい。
 今まで親が一生面倒を見なければならないと自分にも言い聞かせてきていたことが、20歳を過ぎると佑哉も一人の大人として、社会に旅立つのかな〜って思ってしまいます。
 しかし、本当に信頼できる親以上とまでは言わないにしろ面倒みてくれる(生かしてくれる)所ってあるんだろうか。年金のこと、施設のこと、グループホームのこと、誰が親に代わって親身になってくれるのか、まだまだ心配です。明日夫婦そろって事故なんて考えたくもないが、究極の事態がなきにしも。

 
資料収集
1.無謀にも法務局へ

 解らなければ、調べるだけ。無知な私にとってインターネットは宝のツール。『成年後見制度』で検索すると37,000件もヒット。どうも法務局の管轄らしい。地方法務局の窓口で証明書を交付することを開始したとの情報だけで、札幌法務局(北8西2)に行ってみた。法務局といっても昔会社の登記書類を頼まれて交付してもらったくらいで、何年も来たことない。うろうろ、きょろきょろは初心者の特徴か。
 胡散くさい男とみられたかも。目ざとく、「成年後見・・・」なんていう看板を発見。成年後見制度のこと教えてくださいって聞いてみたら、証明書の発行するだけの窓口で、家庭裁判所に行ったら解りますよ。なんて親切に教えてもらった。まだメジャーな窓口ではないらしく、パソコンに職員の方が座っており、だれも近づこうともしていない。悪いけど暇みたい。(だから胡散臭い男に親切に教えてくれたのかも)

 
2.家庭裁判所へ

 気を取り直して、家庭裁判所へ。解らなければ聞くべし。入り口のガードマンさんに「成年後見」についてお聞きしたいことがある旨を告げると、ここでも親切に受付まで案内してくれた。受付では、「初めてですか」って聞かれるので初めてです教えてくださいって答えると番号札を渡され、待合室でおまちください。番号は3番。なんか病院の受付みたい。
「家事相談のご案内」という印刷物をもらい、読んでいると、「自分はどうすべきかなどの指導はしておりません」とか「離婚したほうがよいかどうか」「慰謝料はとれるかどうか」「養育費はいくらもらえるか」などの具体的な金額を相談されてもお答えすることはできません。なんて記述がある。ここは離婚調停をする所なんだ。まあ今までそんな状態にだけはなったこと無かったので、知らなくても良かったのかと妙に納得する。おお、妻よありがとう。
 しばらく待っていると呼び出され、取調室(入ったこと無いが)?みたいな狭い部屋に裁判官のような、親切なナイスミドルが。早速成年後見の申請書類を出してきて記載方法、準備する書類、費用などの説明に入る。ちょっとまって。もう少し内容が知りたかったのに。もう申請することを前提に話が進む。まぁいいか。さっきの家事相談のご案内での「自分はどうすべきかなどの指導はしておりません」が頭をよぎる。冊子を読んで、書類を前に自分で考えろってことか。
 財産管理って言葉が随所に出てくるので、財産がない者が申立てするのはお門違いかと思って尋ねてみると、あなたには無くとも、突然の遺産相続とかこれから先、宝くじに当たるか何が起こるかわかりませんよ。なんて。

3.申し立てに必要な書類

 申し立て時に必要な書類を丁寧にチェックしながら教えていただいた。なんとなく集めることはできそうなものばかり。 ■印が必要なもの (ただし、札幌を基準に書いています)

1)申立書類 ■申立書
■申立書付票(含財産目録)
■後見人等候補者身上書
(いずれも所定の用紙が家庭裁判所に用意されています)
2)本人 ■戸籍謄本(全部事項証明が交付される場合は改製原戸籍も)
□又は外国人登録証明書
■戸籍の附票
■登記されていないことの証明書(東京法務局に申請)
■診断書(なるべく所定の用紙で。ただし、補助開始の場合は必ず所定の用紙で)
□申立てについての同意書(補助開始の場合)
□同意権・代理権の付与についての同意書
   (補助開始または保佐開始の場合)
3)候補者 ■戸籍謄本(全部事項証明が交付される場合は改製原戸籍も)
□又は外国人登録証明書
■住民票
■身分証明書
(破産者ではないことの証明。本籍地の市役所、町村役場で申請)
4)申立人 ■戸籍謄本
□又は外国人登録証明書
■住民票(記載事項を省略しないもの)
※候補者が申立人である場合は、候補者の分だけで結構です。
4.申立てに必要な費用
収入印紙 800円×1枚 1枚 800円
郵便切手 1,000円 1枚 1,000円
200円 4枚 800円
80円 15枚 1,200円
20円 2枚 40円
10円 10枚 100円
小計   3,140円
登記印紙 ■4,000円  □2,000円   小計   4,000円
鑑定料(診断書) 60,000円前後
(金額は後日決まります。決まったらご連絡しますので、お送りする振込用紙にて銀行等でお支払いください。)
住民票 350円 1通 350円
戸籍謄本全部 450円 3通 1,350円
戸籍附票 700円 1通 700円
身分証明 350円 1通 350円
    小計 2,750円
       
登記されていないことの証明書 500円 1通 500円
       
  これまでの総費用    70,390円

   ※ この費用は、佑哉が申請した時のものです。変更になっているかもしれませんので、あくまでも参考程度にしてください。

5.本人の財産関係の資料
項   目 資   料 備   考
定期的な収入 ■年金の支給通知書(はがき)
□不動産収入等がある場合は、確定申告及び収支内訳書
振込まれる通帳と年金証書でも可。直近のもの
定期的な支出 ■入院費・施設費の領収書 最近3ヶ月分(おむつ代も含む)
□道・市民税の通知書(税額) なければ再発行または納税証明書
□固定資産税の通知書(税額) 同上
■健康保険料の通知書(保険料) なければ再発行
□介護保険料の通知書(保険料) 同上
□家賃の領収書(本人名義で借りている場合)
□その他恒常的な支出があればしの領収書
 
預貯金 ■本人名義の通帳全部 残高証明書だけでは不可
3ヶ月以内に通帳を更新している場合は、更新前の通帳も必要
■定期預金などの証書
□証券会社からの通知書
 
生命保険 □本人が契約者となっている保険契約の証書・証券  
不動産 □登記簿謄本又は登記事項証明書(法務局で申請) 権利書だけでは不可。抵当権が設定されている場合は、共同担保目録も必要
□固定資産税の通知書のうち、資産の内訳ページ(評価額) なければ評価証明書(市役所・町村役場)
負債 □債権者名、残債務額、月々の返済額がわかるもの 住宅ローンなら償還表、サラ金なら督促状など
その他 □株式 保護預かりの通知書など

 
備   考

 1 これらの項目は、申立て時に提出していただく財産目録に対応しています。
 2 申立ての際にコピーを提出し、調査の際に原本をお持ちください。コピーの取り方は、別紙「家庭裁判所に提出する資料のコピーの取り方」を参照してください。

6.札幌市区役所へ

 区役所は皆さんもおなじみですね。町村だと役場ですか。相変わらず駐車場は満杯。事前に部数を確認していたので途惑いはなかったが、戸籍謄本だとか住民票はおなじみだが、「戸籍の附票」は知らなかった。申請書を良く見ると書いてあったが。交付されてみると、家族全員の現住所が書いてある。(私の場合かな)区役所では¥2,750の領収書。

7.またまた法務局へ

 一度たずねたことのある法務局へ。今度はまっすぐにあの係官のところ。「登記されていないことの証明申請書」に必要事項(住所とか本籍とか)書き入れ、戸籍謄本を添えて申請すると、即刻発行された。申請書の下の方に「◎証明を受ける方」のところがコピーされた証明書が発行されるので、文字はきれいに書いた方がいいかも。活字で発行されると思い、へたくそな私の字がそのまま証明書になってしまった。

 上記の者について、後見登録等ファイルに成年後見人、被保佐人、被補助人、任意後見契約の本人とする記録がないことを証明する
                                  東京法務局  登記官 ○○○○

 以前は東京法務局で、郵送の受付をしてもらえたが、平成17年1月31日から全国の地方法務局の窓口で証明書が交付されることになった。
 交付手数料は、一通に付き登記印紙で500円。添付書類は戸籍謄抄本等親族関係を証する書面となっている。

8.診断書

 診断書は家庭裁判所の所定用紙がある。主治医に連絡を取って診断書を書いてもらおうとするが、「成年後見制度」と言ったとたん、本人に面接し症状を再度確認しなければ書けないとの返答。主治医の先生の予定を聞いて、予約を入れることが出来たのが1ヶ月先。確かに本人の権利を奪う成年後見なだけに慎重であるべきだが、1ヶ月先とは主治医の先生もお忙しいことだ。とりあえず集めなければならない資料はそろったのだが、診断書待ちで家庭裁判所の窓口はまだまだ遠い。

 ようやく主治医との面談。成年後見の診断書は慣れているようで、スムーズに診断書の発行に。診断名は「自閉症・重度精神遅滞」、IQは20。いやーなテストの採点じゃないんだから。まてよ、障害者基礎年金の時の診断書はIQ25だったと思ったのに。と言う事は、年を重ねるとIQは低下するのか。まあ20でも25でも大差はないか。

9.申請

 必要書類・切手・収入印紙等をそろえ、最初から本人を同行させることを考えていたので電話予約をする。いつでもいいとの返事。窓口もスムーズ。すぐに控え室に通され、担当調査官が現れ質問を2〜3、書類的な確認の後質問のような形式で進む。
 緊張したが終わってみるとこんなんでいいのって感じ。特に難しいことはなかったが、質問の中で「成年後見人になって何をしますか」っていう質問があった。何も考えてなく、今までと変わりないと思いますって答えるしかない。何を意図とした質問なのか。
 本人も同席していることで、調査官も納得しているのか難しいことはなかった。診断書を見て鑑定の必要はないかもしれないと告げられる。決定は裁判官であるから決定ではないがとの断りはあったが。それらはどうもIQが関係している様子。IQがいくらまでは鑑定が必要でというボーダーラインはないようだったが。
 極力本人を同行させるということは、早期に判断が下される近道になるようだ。また、昼食時間や終業時間ぎりぎりだと面接も後日ということになり、余分な手間が掛かる。まだ家庭裁判所の成年後見の窓口は混雑しておらず、面接時間を考慮して、終業1時間以上前の申請をお勧めする。
 集団で申請する場合は、事前に家庭裁判所の都合をお伺いすることもスムーズに事務処理が流れる要素にもなりうるようだ。

10.家庭裁判所から審判の通知が

 家庭裁判所から、「平成17年(家)第20156号後見開始の審判申立事件」という物々しい通知が送られてきた。     以下引用

 本件記録によれば、現在、本人は精神上の障害により事理を弁職する能力を欠く常況にあることが明らかであるから、本件申立を相当と認め、主文第1項のとおり審判するとともに、職権で第2項のとおり審判する。

     主     文
1 本人について後見を開始する。
2 本人の成年後見人として申立人を選任する。

平成○○年○月○○日
札幌家庭裁判所
  家事審判官 ○ ○ ○ ○

引用終了
 という内容の審判決定書なるものが送られてきた。あわせて、本人宛にも成年後見開始通知書も送られてきた。 同封されていたのが、「成年後見人の職務について」という内容の文書。 

成年後見人の職務について(引用)

1. 成年後見人に選任されたときにしなければならないこと

財産目録の提出

 ご本人の財産を調査し、1ヶ月以内に財産目録を作成し、家庭裁判所に提出してください。なお、ご本人がそれまで行っていた取引(銀行取引など)によっては、契約上、後見が開始されたことや成年後見人が誰になったかを相手方(銀行など)に知らせなければならないとされている場合もありますので、ご本人が行っていた取引の契約内容についても注意してください。

2. 成年後見人になっているあいだにしなければならないこと

(1) 療養看護等

ご本人の生活及び療養看護のために、ご本人に代わり、在宅介護契約、施設入所あるいは医療契約などを行います。

(2) 財産管理等

 ご本人の財産を安全な方法で管理し、ご本人に損害を与えることがないようにする必要があります。ご本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の情況に配慮し、ご本人にとって財産ができるだけ有意義に活用されるように努めてください。
 成年後見人とご本人の間で、金銭の貸し借りや遺産分割をしたり、成年後見人が借財するに当たってご本人が所有する不動産を担保に提供するなどの利害が生じるようなときには、必ず家庭裁判所に相談してください。
 「特別代理人選任の申立て(家事審判事件)」が必要なときもあります。なお、遺産分割においては、ご本人の「法定相続分」は必ず確保してください。

(3) 報告事務等

 民法863条において、家庭裁判所は、いつでも、後見人に対し、後見事務の報告、財産目録の提出を求めたり、後見事務や財産の情況を調査したり、さらに、後見事務について具体的に必要な処分を命じることができると規定されています。
       以下省略

 以下、等々常識の範囲ないかなってことが約3ページ。どうも財産のあるお年寄りを法的に保護する制度に思えてくる。確かに昔、障がい者基礎年金を受けていた方の中にはある程度の貯蓄ができた方もいると聞くが、今の障がい者基礎年金は、必要経費を差し引いたら、残らない。残してあげる手立てを知っている方がいたら教えてほしい〜ょ。

 この後の手続きは、審判書を受け取り後、2週間経過後に後見開始の審判は確定。東京法務局後見登録課に後見開始及び後見人選任の登記をし、東京法務局から通知を受けて「登記番号等」が知らされる。この間は家庭裁判所の仕事なので、ただ待つのみ。

 先日、父母の会の行事で成年後見の講習会に参加させていただきました。札幌リーガルセンターの石川先生を講師に迎え、熱心な2時間でした。その中から、気がついたこと、少し書いておきます。

候補人

 候補人とは、成年後見人になれる人のこと。全国の成年後見人の80〜85%は親族か候補人として申請し後見人に就任する。例外として、財産があり、親族間のトラブルに発展しそうな場合は、第三者後見人もありうる。
札幌裁判所での成年後見人の任命事例
 成年後見人として任命されるとみられる方
   ○ 親族 (親・兄弟等)
   ○ 弁護士 (原則有料)
   ○ 司法書士 (原則有料)
   ○ 社会福祉士 (利害関係にない場合・原則有料)
   ○ 法人格を持った団体 (消極的ではあるが今後の進展では)

 成年後見人として的確を欠くと見られる方
   ○ 社会福祉法人 (利害関係にある法人)
   ○ 社会福祉士  (利害関係にある法人に勤務する方)
   ○ 任意の方  
     (隣のおじさんも含めて、簡単に退任できると見られる)
   ○ 利害関係にある個人  (財産を目当てにする)

 高齢者の成年後見は、財産の有無で家族間でもトラブルの原因もあるが、知的障がいをもっている方の財産は微々たるものだと思う。弁護士の先生も司法書士の先生も、実質ボランティアで成年後見を引き受けている事例を聞くともっと良いシステムが必要だとも痛感する。
 まあ、突然祖父母・親からの遺産相続なんてことも考えられなくもないが、障がいをもっている方の財産を狙うなんてとんでもない。それでなくとも措置制度から契約制度、さらに障がい者支援法なんて猫の目のように変わる政策。
 それでなくとも少ない障がい基礎年金を、受け取る以上に分配なんてできないのに…