こだわり日記
高校生初夏

 高校生活もなれてきた。学校でも寮でも独自の世界を作っているらしい。寮の先生も相変わらず音楽三昧の生活だという。ただ困ったことは、他人のカセットも自分のカセットも分かっているのだが自分のものにしてしまいたい欲求が強すぎる。
 隣の子のカセットにもいたずらをしたり、寮中のカセットは佑哉のもの。いつも謝らされているのに懲りない。「自分の物は自分のもの、他人のものも自分のもの」よく言ったものだ。
 カセットから少し成長させようと親の抵抗を試みた。帰省のたびに「カセット」「ビデオテープ」と買い物をせがまれるが、たまったものじゃない。カセットは音楽の入ったテープで、だんだん安売りの物では納得しなくなった。なんせ、パッケージの曲名、中に入っている歌詞カードが必要なのだ。ビデオテープは空きテープであるが、すぐ録画してしまう。なんでも良いのだ。部屋の箪笥の中にはきちんと自分なりに整理して保管してある。入れ替えたのがわかるくらいに...
 思い切ってMDとCDとカセットの聞けるコンポを寮に持たせた。スピーカーをはずしヘッドホーン専用にして。帰省のたびにMDに録音して持たせる仕事は増えたが。
 佑哉のもうひとつの要求は、帰省のたびにせがまれるMIDIである。好きな楽譜(NHK:みんなの歌)の曲つくりである。これは私の仕事になっている。朝から楽譜を持って私の周りをうろうろ。
 私の才能では一曲入力するのに、2時間はたっぷりかかる。自分で入力することを覚えてくれたら最高にハッピーなのに。いまだにクレーン現象が続いている。

   (※クレーン現象 : 他人の手を自分の手のごとく利用する自閉特有の現象)

10月10日

 朝から鼻水がツター。プールに行こうと約束していたが、大事をとって中止。でもカセットテープを聞きご機嫌。最近はスマップやV6もお気に入り。女性歌手はどういうわけかだめなようだ。
 でも、NHKの「ドレミファどーなっつ」が最高のお気に入り。高校生になっても未だにそんなもんかと言わないで下さい。佑哉にとって、体は高校生でも、気持ちは3歳ですから。高校生の男の子と手をつないでお出かけなんて、世間の標準的な家族では出来ないだろうな〜。
 夜、山田洋次監督の「学校U」がやっとテレビで放映された。主人公?は自閉症の”ゆうや”。テレビから「ゆうや」と呼ばれるたびに本人どきり。部屋から飛び出してきて、なんとなく画面をみている。
 西田俊行の先生役は、とても味のある先生で、たのもしい。卒業式のシーンで「なんでもっと学校に居れないんだ」の言葉にそーだそーだ。「差別されない社会が来るまで」っていつなんだろうと感じてしまう。でも、自閉とか養護学校を知らない方がこの「学校U」を見ての感想は、どうなのだろうか?見た方感想をメールいただけるとうれしいぞ〜。
 さすが山田洋次監督。涙とお笑いのミックス度合いは最高!。

よさこいの日

 今日は星置養護学校の運動会と、大好きな「よさこいソーラン」の日だ。星置に行ってから「よさこい」に行くんだよと言ってある。大喜びだ。
 星置の運動会も、ぐずついていた天気がこの日ばかりは上天気だ。佑哉はグランドへ行く前に寮に顔を出す。先生の靴箱をチェック。たまたまお気に入りの先生の上靴がなく、パニック。先生を探しに行こうとなだめ、先生探し。先生に会って上靴の在処を聞いてまた寮へ。探し当て所定の場所にきちんと置いて一件落着。
 もう体力的にも佑哉の方が上。とても親の言うことなんか聞くものではない。二人掛りで押さえても、もう限界。頼むからもう少し、こだわりを押さえてくれませんか佑哉君。運動会のみなさま、たいへんお騒がせをいたしました。なつかしがってくれた先生、ありがとうございました。
 午後、「よさこい」を見に琴似会場に行く。午前中に体力消耗しているので、メイン会場ではなく近くの会場に。沢山の人垣の後ろに立ち、腹に響く音と、元気に踊る人たちを嬉しそうに見ている。
 だいぶ背も伸びたので、人垣の間からも見える。でも、気持ちは肩車。いつもより長い時間見ていたように思う。帰りに「バス」・「地下鉄」といつものメイン会場に行きたいらしいが、親の都合もあるので、今年はこれで終わり。もっと見たいと思っている佑哉であった。

卒業後学校へ

 卒業後初めて星置養護学校へ行く。中札内高等養護学校へ行った帰りに、星置養護学校へ寄る。事前に話していなかったこともあり家の方角と違う道に気がついたのだろうか、どこ行くのの質問に「小樽」。学校の前に着くと先生の歓迎を受けたが、どういうことか学校の中に入ろうとしない。「自分はもう卒業した」の意識か、どうしたことか先生から話しかけられても、車の中に入り、出ようとしない。卒業を完全に理解しているらしい。今日は疲れた一日だった。

卒業の日

 今日は佑哉のいやーな卒業の日。朝から元気がない。学校の教室・体育館には卒業おめでとうの飾り付けがまぶしい。最後の教室では、学校やPTAからアルバムや記念品が届いている。先生から手渡されるとその場でビリビリ。
 式の入場では、友達の車椅子を押している。関心関心!。一人ずつ名前を呼ばれ、一人ずつ校長先生の前に行き卒業証書を受ける。佑哉の番だ。みんな上手に出来たが、果たして。まじめな顔して卒業証書を受け取った。少し前の佑哉なら、かしこまった場所では得意の発声練習と脱走があったのだが、さすが大人になったものだ。
  卒業生からの記念品贈呈は、佑哉と手をつないで大好きな女の子と二人で。書いてある物を読むのは得意、学校ではアナウンサーである。最後まで読んで、無事終了。
 先生の涙を見ても、感情を表さない。もう少し、喜怒哀楽の「怒」と「哀」の感情が表現できると...。
  なにはともあれ無事卒業できた一日であった。

何もない日

 (父)久しぶりに実状視察にでも行こうか。(母)いいよ。何も言わずに佑哉は状況を判断。どこにいても外出支度を始める。感の鋭さはピカイチ。実は(父)の趣味でたまに街中心部(電気屋さん)へ行く。
 佑哉には佑哉の目的がある。札幌地下街のSTV(札幌テレビ)のサテライトスタジオが目的である。STVのコーナーにはきれいなお姉さんがいるが、そちらは無関心(ごめんなさい)で、番組の案内やアナウンサー諸氏の載っているチラシが目当てだ。
 親が準備も整わないうちからさっさと支度をし、制止するもブレーキは故障。「バス、バス」と連呼しながらマンションの外へ飛び出す。一度連れ戻され、じたばた。おもむろに手をつながないと行けないよと声をかけるとやっと落ち着く(最近は)。バスを待つ間も「ワー、ワー」(喜びを表す佑哉の表現)お口チャックも最近は効果薄い。
 バスが混んでいても「座って」と言って空いているイスを探す。座れないのがおもしろくない様子。それも左側のイスでなければ意味がない。バスから一瞬見えるSTVの建物が目的。
 降りてからは、どんどん手を引っ張って地下街のSTVコーナーへ。最近は力が強くなった。100m位まで近づくと手をふりほどきまっすぐSTVコーナーへ走って行く。目的の物を手いっぱいに集め、待っている。STVコーナーのお姉さん時々おじゃましてご迷惑かけております。ごめんなさい。
 手にいっぱいのパンフレットを大事に持ち、佑哉の目的は達成し、もう帰ろうとする。何のために来たのか?ようやく手を引っ張って電気屋さんに行くが落ち着かない。歩きながら先ほどのパンフレットを広げ、熱心に読んでいる(見ている)。
 今日も落ち着かない佑哉であった。

よさこいの日

 帰宅の日とよさこいの日が重なった。いつも大喜びしているので今年も見せてやりたい。学校から帰ってきてすぐバスで大通りの会場まで。夏の行事で気温以上に熱気でむんむん。屋外の行事なので少々騒いでも迷惑が掛からないので安心。
 適当な見える場所を探すが、それ以上に観客の数が年々増えてなかなか見つからない。背伸びしながら見ているが、そのうち(父)の後ろに回って「すわって」と要求する。もしや!もう私の体力の限界だよ。一度肩車をしたことを思い出させてしまった。
座らずにいると肩に手をかけてよじ登ろうとする。もう体格は親以上(母)。とても要求に応えられない。
 要求が受け入れられないと思うと手を引っ張って「バス、バス」今日も落ち着かない佑哉であった。

元旦まで2日

 (父)佑哉どこ行きたい...。「おけと」と言ってタンスや押入からバッグを引っぱり出しお母さんに「おけと」と言いながら押しつける。早く準備しろとせかしている。手をかけるまで「おけと」「おけと」の連呼。生まれて間もないころは外泊などとんでもなかったことを思い出してしまった。
 外泊先で夕方になるとバックをずるずる引っ張り、帰ろうとする。制止すると一人で車の中に入って待っている。
 さすがに成長したなと感慨深いものがある。しかし...、おけとでは2泊のみ(本人は我慢しているらしい)母の実家では1泊のみ。それが年中行事であるかのように。着替えなどバックに詰め始めると安心顔で自分の好きなことに集中している。今日はまじめに作業(?)をしている佑哉であった。

元旦まで1日

 朝の目覚めはいつもより早い。心はもう車の中。渋滞がなくとも5〜6時間。出発が待ちきれない様子。車に荷物を積み込み、いざ出発。あれほど好きなSTVラジオも車の中では聞かせてもらえない。ラジオの電源を入れると「カセット」と言って後ろの席から手が飛び出してくる。家ではSTV、車では音楽にこだわっている。走る車の中では眠ることもなく、これより何々町に入る看板を見つけると、その前を走っていた町を繰り返している。
 おけとに着くと挨拶もそこそこすぐ爺ちゃんの部屋に飛んでいき、好きな演歌と嫌いな歌のカセットをより分け、佑哉専用の壊れたラジカセでおとなしくいい子である。今日は爺ちゃんのカセットを目当てに親とつきあったそんな一日であった。

風邪でダウン

 風邪気味だとの連絡でお迎えに行く。やはり少し動作が鈍いようだ。布団にくるまりながらカセットで音楽を聴いている。いつもより音量が小さいようだ。いつもは何回も音小さくしてと叫ばれているのに、おとなしい。
 病院で診察してもらうが、聴診器が体につくかつかないかのうちからくすぐったくて笑い出す。先生も風邪ですねと薬を出してもらう。薬は佑哉の大好物らしい。他の同級生とか薬を飲んでいる人のを見ているのか、自分から飲む。
 今日はすこぶるおとなしい佑哉であった。

風邪翌々日

 昨日は布団から起きられない。今日も休みの連絡をしなければならないと話していた。学校へ行く時間ぎりぎりに突然布団から抜け出し、「がっこう」と言って支度を始めた。まだ風邪が完全には治っていないのに...
 今日は学校行事でテレビ塔に見学に行く日なのだ。卒業間近なので、学校生活を楽しませてあげたいが、大丈夫だろうか?佑哉の決心が固いらしく引こうとしない。仕方なく送っていく。
 案の定、学校に帰ってくる時間に電話が入る。いつもよりおとなしい佑哉だったと先生からも伝言があった。この日はもうすっかり治った様子でいつものボリュームに戻っている。動きも良い。明日がっこう行くよと言うと今日は「がっこうやすみ」と威張っている。休み癖がついたのか、はたまたずるさが顔を出したのか。今日は元気になった佑哉であった。